「悪貨は良貨を駆逐する」というのはよく知られたグレシャムの法則だが、これは「情報」においても当てはまるかもしれない。
インターネットの現状に詳しい人ならすでに気づいていることだが、昔ながらの「電子メール」がすでに使い物になっていない状況が広がっているのは、その代表例であろう。
個人の電子メールにおいても、あるいは企業の電子メールにおいても、いわゆる「迷惑メール」や「詐欺メール」が大量に押し寄せ、「正規の、正しい、問題のないメール」がそれに埋もれるようになっている状況が広がっているが、いわば
◆悪メールが良メールを駆逐する
という、まさにグレシャムの法則どおりのことが起きているわけだ。
それと似たようなことが、今後は生成AIや人工知能をとりまく情報業界で一気に進行してゆく可能性がある。
それはどういうことかというと、
◆ まず、人間が情報を作成し、それをネットに載せることで、たくさんの情報がテキストとして蓄積される
◆ それらを各種人工知能が読み込んで、自分の生成文章や画像のベースとして用いる
◆ それぞれの人工知能は、これまでに発表され、蓄積された情報から「生成AI発の新しいテキストや画像」としてネットに載せる。
◆ これが一定の量に達すると、今度は「生成AIが生成したテキストや画像」などを用いて「生成AIがそれを参考に新しいテキストや画像」などを作るようになる。
この流れは、今現在も世界中で起きていて、今はまだ「人間が生成したテキストの模倣」の段階だが、ある時点で「模倣から生成された模倣」がオリジナルを凌駕するようになるのである。
この時、もとの情報から自動生成によって「ノイズ」が少しずつ入っていったり、「誤謬」が少しずつ入っていったりするから、生成練度が高まれば高まるほど、(あるいは生成輪廻が繰り返されるほど)、
”情報は少しずつ汚染されてゆく”
のである。
恐ろしいのは、その検証作業、オリジナル性のチェック作業にも生成AIが用いられるようになると、さらにノイズや誤謬が、上書きされてゆくということが生じる。
間違った情報が、「それが正しい元ネタである」と自動的にカウントされてゆく、ということが起きるのである。
そうなると、最終的には、
”印刷物で出版されたものしか、それをオリジナルとみなせない”
みたいなことが起きる。
歴史学で言うところの「一次資料」を探しにいかねば、そのほかは全部伝聞又聞きの「二次資料」になってしまう!なんてことが起きるわけである。
こうした情報汚染は、我々が思っているよりもはるかに早い速度で進むので、これからの情報界がどうなるのか、あるいはその時、どんな「思っても見ない不具合」が起きるのか、我々は戦慄せねばならないかもしれない。
恐ろしおそろしなのです・・・。
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